「ねえ、ククールには苦手なモノってある?」



宿屋に着いてから割り当てられた部屋で夕食を取っていると、同室のエイトが突拍子もない質問をしてきた。

あまりにも突然で、質問の意味を理解するまで数瞬。 丁度フォークに突き刺した野菜を口に運ぶところだったから、口を開けたままの間抜けな状態。

ハッとして、取り敢えず野菜を口の中に放り込んで咀嚼する。 飲み下して、やっと言葉を発した。



「苦手なモノってーと…? 何だ、食べ物とか?」

「うん、食べ物でも何でも良い。」

「何でも? どうしたんだよ突然。」

「あ、そんなに深い意味は無いよ。 ただ、ククールって苦手なモノ無さそうだから。」



どうやら持ち前の好奇心が疼いたらしい。 興味津々で俺の様子を窺っている。 しかも、上目遣いで。

その目その顔その仕草。 俺がソレに弱いって知っててやってんのか?お前は。 んなワケ無い。 絶対天然だコイツは。

フォークを皿に置きながら、自分の苦手とするものを思い浮かべてみる。 苦手なものは無くても弱いものならありそうだが。







…………弱い?











そうだ。









「苦手っつーか、弱いもんならある。」

「そうなの?」

「可愛くて、天然で、好奇心旺盛で、華奢で、誰にも負けない強さを持ってるヤツ。」



わからないと言いたげに小首を傾げるエイトを見て、俺はニッと口の端を持ち上げた。







「エイトにベタ惚れのククールさんは、お前に弱いから強気になれないんだな、実は。」







ベタ惚れ、の所でエイトは顔を紅潮させる。 おぉ、茹で蛸の完成。

そわそわと落ち着き無く視線を彷徨わせていたエイトだったが、例の上目遣いで此方を見ながら口を開いた。



「ククールが僕に弱いなら…僕が君に何かを願ったら、君はそれを嫌とは言えない?」

「まぁな。」

「じゃあ…」











僕の傍に居てくれる?











エイトが囁いた言葉に胸が高鳴った。

その願い、拒否出来るわけが無いだろ?



「仰せのままに、愛しの姫君。」

「姫って…。」

「いいんだって。 俺にとってのお姫様はお前なんだから。」



席から立ち、エイトの傍に跪いて彼の白い手を取り甲に口付ける。

エイトは照れながらも、その行為を受け取ってくれた。















それからエイトは俺と同じように床に膝をつき、こう言った。

















僕の弱いものは君だよ、と。












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過去拍手で使ってたSS。
砂糖吐きそうなくらい甘ったるい人達になってしまった(笑