「おはようバハムル! ほら、お前の好きな林檎だぞ〜! って、うわぁ!?」
「こら、行儀が悪いぞ。 ルーネスに飛びつかなくても林檎はお前のものだから安心しろ。」
「こいつ、ここ数日で大きくなった気がする・・・。」
「ドラゴン族は人間よりも早く成人になり、そこからゆっくり歳を取るそうだからな。」
「じゃあバハムルもすぐに大人になるのかぁ。 ちょっと楽しみかも!」
「キュ?」

おはようございます、皆さん。 光の戦士紅一点レフィアです。
見ての通りルーネスとイングズとバハムルが親子してる御陰で私とアルクゥは蚊帳の外。 入り込めないのよ、あの空間。
本気でバハムルが2人の子供に見えるあたり、私どうかしちゃったんじゃないかと思うわ。
ああほらアルクゥもそんな木陰で本を見てないでこっちに来てちょうだい。 私だけで親子の観察しててもつまんないんだから。
え? ドラゴンに関する書を借りてきた? あのねぇ、実物がここにいるのに書物を見てどうするのよ。
ドラゴンが人の言葉を理解できるですって? あ、一部の。 バハムルがそれに当てはまるかどうかはもっと大きくなってからじゃないとわからないと思うけど・・・。

「キュ、キュウ・・・ォ・・・クゥ・・・??」
「ん? どうしたんだ?」
「・・・私達の喋るのを真似ているのではないか?」
「あー、そう言われれば『お』とか『く』って聞こえるけど。」

アルクゥ。 人語を操るドラゴンも当然いるわよね? 丁度いいわ、その本に何か書かれてないか見てちょうだい。
私は引き続きお茶でも飲みながら親子の観察してるから。 アルクゥもどう? この紅茶、宿屋の女将さんイチオシのものなのよ。 香りが凄くいいんですって。
ん〜、ホント良い香り・・・。 ウットリしちゃうわ〜。

「なあ、もしバハムルが喋れたら一番最初に何て言って欲しい?」
「・・・そう言うお前はどうなんだ?」
「オレ? やー、イングズに向かって『おとーさん』とか言ったら面白いよなー、なんて!」
「私が父親!? 何でまたそんな・・・。」
「本当は『おにーさん』でもいいんだけど、やっぱ名付け“親”だし。」

色んな意味で素敵な発想するわね。 さすがルーネスと言ったところかしら。
笑うのを堪えてたら身体に悪いわよ。 素直に笑ったら、アルクゥ? ほらカップを持つ手が震えてる。 折角の紅茶を零したら勿体ないわ。
あら、イングズの眉間に皺が寄ってる。 嫌だったのかしら。 と、いうよりは何か考えてる感じ?

「では、お前が母親になるか?」
「はぁ!?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜!? っ、ゲホッ! 何よ、何なのよ今の爆弾発言!! 思わず吹き出したじゃないの!! あぁ、ローブに染みがついちゃう〜!
アルクゥ! しっかりして! 意識を手放すのはまだ早いわよ!! 気持ちはわかるけど。 遠い目をしないで〜!

「一番懐かれているのはお前だろう。 手当をして救ってやったのもな。」
「いや、そりゃそうだけど・・・!」

ルーネスも何か言い返しなさいよ。 イングズはイングズで冗談じゃなく真面目に言ってるし。 この天然コンビどうしてくれようかしら。
そうね。 今更よね。 気にしない方向で行かなきゃ駄目よね。 アルクゥ、貴方だけだわ私に同意してくれるの。
バハムルがまたルーネスに甘え始めてる。 イングズのあの緩んだ顔、サラ姫様にも見せて差し上げたいくらい・・・。

『・・・ぅ・・・カァ・・・さ、マ!』
「へ?」
「何?」

・・・。
はい?

『ルー・・・かーさま!!』
「オレぇ!!?」

え、ちょ、バハムル喋って・・・!
かーさま・・・母様!?
あ、目眩。

「やはりルーネスが母親か。」
「ばっ、笑うなよ! バハムル、オレは『にーちゃん』で良いから! 頼むって!!」
『かーさま!』
「ばはむるぅ〜!」
「素直に母親と認めたらどうだ?」
「オレは男だー! ・・・っ、じゃあイングズは? イングズは何なんだ!?」
『ぃ・・・グズ・・・とー、さま!』
「ということだ。 諦めるんだな、ルーネス『母様』?」
「嘘だろー!?」

・・・私は『姉様』を希望するわ。 アルクゥは『兄様』のポジションが空いてるわよ。
これで人語を理解し、話すことのできるドラゴンの存在が明らかになったわね。 きっと本には載ってない情報よ。 良かったじゃない。

「私が父親役では不満か?」
「べ、別に不満とかそういうんじゃ・・・!!!」
「ならば良いだろう。」
「うぅ・・・・・・。」

・・・・・・。
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あー! やってらんないわ。 御馳走様! 一足先に帰りましょうアルクゥ。 これ以上ここに居たらどうにかなりそうですもの。



皆さんも、あの天然2人組に毒されないうちに避難して下さいね。
以上、レフィアの観察日記でした。













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次で終わるかなとか言っておきながら、ものの見事に横道に逸れました(爆
本当のお母さんは『母上』なんですよ。 お母さんじゃないけど、お母さんみたいなルーは『母様』と区別。
本人全く悪気ありません(当然
イングズは内心『父様』と呼ばれて嬉しいと思う。 ルーネスと夫婦だし(笑

次こそ、終わるかしら。。。