『貴方に会いたい』







「君のことが好きだ。」



旅の途中に立ち寄った泉で休憩を取っていた時、イングズから唐突に告げられた。
きょとんとして周りを見たけれど、当然アルクゥもレフィアも隣にいない。



「・・・変だと思われるかも知れないが、私は・・・その、仲間や友人ではなく、恋愛感情として君を好いているんだ。」



普段堅物なイングズが何の冗談を言い出すのやら、と笑おうとした。
でもイングズの眼差しは真っ直ぐオレを射抜いていて、本気なんだと悟り、言葉を飲み込む。
好きって言われたのは嬉しい。 オレだってイングズが好き。 もちろんアルクゥもレフィアも好きだ。
だけど、その『好き』は、イングズの『好き』とは違うんだろ。 オレの『好き』じゃあイングズの気持ちに応えられないよ。
だから・・・ゴメン。
ゆっくり、選んだ言葉を正直に伝える。
言い終わった時、イングズはただ静かに「・・・わかった。」と頷いた。







あれから何日かが過ぎて。
イングズとの関係は何も変わっていない。
以前と同じく話をして、朝には剣の稽古をして、ちょっとしたことで笑い合って。
変わったといえば宿屋で全員が個室をとるようになったこと。
それまではオレとイングズ、アルクゥとレフィアで一部屋だったから、一人ぽつんとベッドに寝転ぶと部屋がすごく広く感じる。

そういえば。
オレの中でも変化があった。

無意識のうちにイングズを視線で追いかけるようになった。
町で別行動していても、何処かにいるんじゃないかって探す。
戦闘中では、怪我してないかと気になって自分の方がおろそかになって逆に叱られたり。
イングズの何気ない動作に一喜一憂するようになった。
こうやって、一人でいるのが淋しいと無性にイングズの声が聞きたくなる。



・・・あれ? これって、もしかしてオレ・・・。
イングズへの『好き』が、特別なものに、変わった・・・?



告白されて、振ってから自覚するのも情けない話だけど。
でも、今は。
イングズに会いたくて。
想えば想うほどにイングズが恋しくなっていく。



「・・・まだ起きてるかな。」



そう考えると、いてもたってもいられなくて、ベッドから降りて身支度する。
しっかり部屋に鍵をかけたらイングズの部屋に行くんだ。












あの時は断っちゃったけど、今からでもイングズの気持ちに応えられるかな。














そう言ったらどんな表情をするんだろう。











思い浮かぶのは夜空に優しく輝く月を想わせる



綺麗な笑顔。









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やっとこさ自作お題更新です!!
今回はグズルーで『貴方に会いたい』でした。
ルーネス自覚話とも言う。

これ、どっちの視点にするか迷ったんですよ。
結局ルーネスにしちゃったんですけども。
イングズ視点でもイケるかも知れない(笑

2007/10/24