01.こんな始まり方



カーテンの隙間から柔らかな日差しが舞い降りて、新たな一日の始まりを告げる。
日の光が顔にかかり、ロージーはゆっくりと瞼を開いた。
自分が寝ているのは自室のベッドではなく、ソファの上。

(ソファで本を読んでるうちに眠くなっちゃったんだっけ…。 慣れない場所で寝たら身体痛いんだよねぇ…。)

ぼんやりと、夢と現の狭間で考えながら痛みを覚悟して起きあがる。
いや、起きあがろうとしたのだが暖かい何かに包まれていて動くことが出来ない。
予想もしていなかった出来事に、ぼやけていた頭が一気に覚醒する。
ドキドキしながら自分を包み込んでいるモノに触れてみると、それは人の腕で。

「……ん……」

頭の上から聞こえた、少し低めの声にビクリとして身体が強張った。
自分を抱え込んで眠る人物は一体誰なのか。

「……眩しいナ……朝か……」

聞き慣れた口調に、思わず顔を上げて謎の人物を覗き込む。
うっすらと開かれた瞳に、今は朧気ながらも確かに鋭い光が宿っていて。
後ろにハネさせた黒髪、宵闇を思わせる執行人の制服。
それらの事を組み合わせて得た答えはひとつだけ。

「んな、え、ええぇ〜!!?」
「…るせーぞ、ロージー…朝っぱらから大声出すんじゃ無ェ…」

自分自身で導き出した回答に目眩がした。 有り得ない。 あの人は自分よりもかなり背丈が無いのだから。
それでは、この状況は一体何なのか。
ロージーがぐるぐると考えを巡らせていると、問題の本人はロージーを再び抱えなおして眠ろうとする。
しかし、そうは問屋が卸さない。

「ちょっ、ムヒョぉ〜!? 待って! 寝ないで! 起きて離してぇぇ〜!!!!」

静かな事務所内にロージーの叫び声が響く。






こんな一日の始まりが有って良いのだろうか。

執行人・六氷透の助手、草野次郎の長い一日が始まる。






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すいませんすいません大人ムヒョでしかも続いてスイマセン(土下座
3つくらいに分ける予定です。 甘々になるかと思います。

56.非日常に続きます。