志は常に高く、なんて、いつの日かじーちゃんに言われたけれど。
どうやったってアイツには。





 63.一生勝てない






「これが気になるのか?」

しゃら、と気品漂う音色を奏で、目の前に現れたのは、自分が先程まで魅入っていたもの。
いつもイングズの胸元で、ゆらり、揺れてるペンダント。

「んー・・・綺麗だな、って。」

エメラルドやジェード、クリソプレーズとも違う、不思議な翠。
イングズに気付かれたのは初めてだけど、今までだってソレに心惹かれて、ついつい見てしまってたんだ。

「これは私が城に来た時から身に付けていたらしい。 石はグリーン・ガーネットと呼ばれるものだそうだ。」
「えっ、ガーネットって石榴石(ざくろいし)だろ? 普通は赤じゃないのか?」
「ああ、稀にこのような翠のガーネットもあるようだ。」
「ふぅん・・・。」

しゃらん。 オレの手に、イングズのペンダントが舞い込んだ。
離れた所でしか見たことの無いソレを、ひっくり返したり、陽の光にかざしてみたり。
窓から差し込む陽を浴びて輝く石は、イングズの髪と同じくらい綺麗で。
きらきら。 きらきら。

「何か、ズルイ。」

ぷくっと頬を膨らませてイングズに言えば、予想通り戸惑った顔になる。
そんな表情さえも、オレには眩しくて。

「お前って、綺麗なものばっかり持ってるよな。」

黄金の髪。 澄んだ蒼い瞳。 少しだけ薄い唇。 優しく撫でてくれる大きな手。
ほら、挙げだしたらキリがない。
ふて腐れるオレを暫く見ていたイングズが、急に吹き出した。

「では、お前も綺麗なのだな。」
「はぁ?」

イングズの言ったことが理解出来なくて、返答に詰まる。
黙っていたらイングズの顔がどんどん近付いてきて。

「お前は、私のものだろう・・・ルー?」

綺麗な低い声で、耳元で囁かれた。
しかも、普段自分は使わない愛称で呼ぶなんて反則にも程がある。
すでにオレから離れていたイングズの顔を、急激に熱の上がった顔で見れば。
満足そうな、それでいて不敵な笑みを浮かべていて。

「・・・格好良すぎだろ、馬鹿っ・・・!」

悔し紛れに呟けば。

「いつまでも私に惚れていてほしいからな。 当然だ。」
「なッ!!?」

反論しようとしたオレの唇は、イングズの唇で塞がれて。




やっぱり、コイツにだけは敵いっこない。









かしゃん。



手からこぼれ落ちたペンダントが、きらり、床の上で煌めいた。











グリーン・ガーネットの石言葉。
それは『純愛』。






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何かグズ兄が間違いすぎな感じがする件について。
そもそもは誕生石の本を見ていて、グズ兄のペンダントは何だろうと思ったのがキッカケ。
ペリドットと物凄く迷ったのは秘密です。
相変わらずルーネスが兄の爆弾発言に振り回されてます(笑

2008/06/17