かち、かち。 かち、かち。



時を刻むからくりの小さな音。

少年と青年の規則正しい息づかい。

さほど広くない室内で、それだけが聞こえる。





かち、かち。 かち、かち。





多くは、静寂。

辺りは、闇。







―――きしり。







少年が身じろぐと、寝台の軋む音が部屋に響いた。

シーツに広がる銀糸が、たゆたう。

すり寄ってきた少年を、青年は優しく包み込む。




肌と肌が触れあって。

逞しい腕に抱かれ。

少年はつい先程まで青年をその身に受け入れていた。

その行為も満ち足りていたのだけど。

二人で居るだけでも、この上ない幸せが湧き起こる。




すぅ、と大きく空気を吸い込めば、青年から汗と仄かな石鹸の香り。

吐息と共に運ばれたのは、青年の名前。




イングズ。




すぐに声が返ってくる。




何だ?




・・・ん、何でもない。 呼んでみたかっただけ。




緩やかに顔を左右に振れば、青年はそうかと短く呟いて少年の髪を梳いた。






かち、かち。 かち、かち。






また、静寂。




それはあまり長くなかった。

少年が再び青年の名を紡いだから。




イングズ。


うん? どうした。




問えば、同じように首を振り、何でもないと微笑むだけ。






かち、かち。 かち、かち。


今度は青年が先に言葉を紡いだ。




ルーネス。


ん、何?




きゅう、と腕の拘束が強くなる。

そして。






・・・愛している。






睦言を、熱の籠もった声で囁けば。




・・・知ってるよ、馬鹿。




羞恥のためか、そっけない言葉が返される。




オレだって、お前のこと、大好きだ。




物音の少ない空間だからこそ聞き取れた言の葉は、青年を満たすのには充分で。







ああ、私も知っている。







腕の中の少年と視線を交わし、くすりと笑った。






ルーネス。


ん?





・・・もう一度・・・。






かち、かち。 かち、かち。 かち、


















聞こえるのは、乱れた呼吸に混じる少年の甘やかな嬌声と、蜜音だけ。















 80.きっと、これが幸せ


















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行数で稼いでるとか言わないで下さい短くてスミマセン切腹します(一息で言い切った!
ウチのルーネスは普段元気ですが、夜になると急に大人しくなる習性がある模様(?
・・・微エロ目指して書いたんですけど・・・やはりアタシにエロは無理なようです。 ぐふ。

2008/07/05