教えてください。
恋人は変なものを拾って来た時・・・・アナタならどうしますか?
「あー・・・エイト、それは何だ?」
オレは声を振り絞る。
今のは目の前の物体が何なのか理解できない時とかに使う疑問文である。
あ、何か頭痛までしてきた。
えーと?成分の半分が優しさでできているとかいう頭痛薬はどこだっただろうか?
「え?スライムだけど??」
きょとんとしながら当然のようにさらっと返すエイト。
ああ、うんそうだな。
確かにエイトの腕の中にちょこんと収まっているのはスライムだよ。わかってるさ。
この世界で広く一般的に知られているモンスターで、冒険者なら一度は戦った事があるはずの生き物だ。
そう言うオレももちろん戦った事がある。
ただ―――――・・・・
「そりゃスライムっつーか・・・・。」
「ただのおっさんでがすよ。」
「しかもかなり顔が濃いわね・・・・・。」
――――顔が異常におっさんくさい事を除けば、だ。
無精髭とか太い眉とか要ブレス●ア的な口臭があるという点を除けばの話だ。
「うん、確かに濃いよね。
僕も初めて見た時はびっくりしちゃったよ。」
よかった。
エイトもこのスライムの異常には気付いているらしい。
それはつまりエイトの視力に問題があるわけではないという事だ。
「世の中って広いねぇ・・・まだまだ解明されてない謎がたくさんある。」
「ああ、そうだな。この世界は本当に無駄に広いな。」
「たぶん僕達が初目撃だよ!やったね!!モリーさんにも見せに行こうか?」
「・・・・・頼むからそんな風に嬉しそうに言わないでくれ。」
何か引いてるオレ達が変みたいだからと心の中で付け足しておく。
というかヤンガスもゼシカでさえもコメントが見つからないから代わりにオレがつっこんでるってわかってる?エイトさん。
「う〜ん?だってさ、何か見てて愛着わかないかな?
ほら、もっと近くで見てみなよ!」
ずずいとエイトがスライムをオレに近付けてきた。
急いで頬を右に旋回。
直視を避ける事に成功する。
そんなオレの様子に業を煮やしたのか、思いっきりオレの頬にその濃いスライムを押し付けてくる。
「痛ッ!!?ちょっ・・・・ヒゲ当たってるってエイト!!
なんかジョリジョリしてて・・・・イヤアアァァァァァァ!!!」
「あの不精ヒゲはぷるぷるした材質ではないのね・・・・・。
へぇ〜・・・・(あの音声で」
やっとコメントを見つけたらしいゼシカがぼそりと呟く。
『スライムのヒゲは柔らかくない・・・1へぇ』
こうしてまたドラクエの世界に新たなトリビアが・・・・って。
「ほんっとトリビアだなオイ!!しかも古ッ!めっちゃネタ古ッ!!!」
「うわ!びっくりした・・・・。」
「あ、いや何かいつの間にか声に出てたらしい・・・・悪いなエイト。」
ぐらぐらと揺れる頭を振って意識の回復を計る。
ステータス異常―混乱―
しかもコレは『理性のリング』を身に付けても治らない類のものだ。
よし、落ち着けオレ。
説明書にも『クールで知的な美形キャラ』と書いてあったはずだ(※書いてません
設定は守れ、落ち着くんだ。
「あ、しかも喋るみたいだよこのスライム。」
「うーん・・・まぁ、アレだよな。まれに人語を喋るヤツとかいるもんな、うん。」
「ちょっと聞いてみてよ!何か聞き取りにくくって・・・・。」
オレはいやいやながらもそのスライムに耳を近づける。
そして漏れてくる言葉に耳を澄ました。
「祈願。」
「エ、エエエエエエエェェェェェェエエエエエ!!!?
い、いいいいい今何つったぁこのスライムッ!!?」
「うわぁ!!」
オレのツッコミに思わず両手で耳を塞ぐエイト。
その拍子にスライムが落ち、条件反射でそれを受け止めてしまう。
自分の(ある意味)良すぎる反射神経を密かに恨みながら、また聞こえてきた声に耳をすましてみる。
「祇園精舎の鐘の声。所業無常の響きあり。沙羅双樹の花の色。盛者必衰の理を・・・」
「平家物語!!?コイツ琵琶法師とかやってんのか!!?流行ってんのか!!!?
っつかマジで何者だこのスライム!!?中に人とか入ってるって絶対に!」
オレは思いっきりスライムを両側から引っ張って伸ばす。
どんどんあの濃い顔が横に伸びていく過程を目の当たりにして、ちょっと、いやかなり嫌だった。
「お、落ちついてククール!」
「あ、ああ・・・・そ、そうだな・・・・。」
エイトの声にはっと我に返った。
そこでようやくエイトがオレの服を掴んで上目遣いで見上げているというおいしいシチュエーションに気付く。
思わずオレはがばぁっとその小柄な身体を抱き締めて天に吼えた。
「え、エイト!か、可愛えーーーーーーーーーーーーッ!!」
「ドサクサに紛れて何をやってんのこのド変態ッ!!」
次の瞬間、ゼシカのやけにでかいメラゾーマがオレ目掛けて飛来し爆発。
朦朧とする意識と必死に戦いながら自分でベホマをかけて回復した。
うーん、何というか自給自足。
「ク、ククール大丈夫だった?」
「ああ、エイトへの愛で即効回復さ!!」
「じゃあ第二弾いくわよ〜歯ぁくいしばって〜・・・」
「スミマセン!無理です勘弁してください!!」
再び詠唱に入ったゼシカを慌てて止める。
・・・・って、何だかまったく収まる気配を見せないんですが。
「あのー・・・・ゼシカさん?」
「安心して?ここまで大きいときっと跡形も残らず痛みもないわ?」
「うわぁ・・・・なんっつーか殺る気満々ですね。ええ。」
や・ば・い。
オレの脳内信号が全力で警報を打ち鳴らしている。
いや、警告されるまでもなくわかってるさ!
わかってるけど体はもう動いてくれないんです!!
冷や汗をだらだらとかくオレと優雅に微笑むゼシカ。
そんな間に割って入る小柄な影―――エイトだ。
「や、やめようよゼシカ!」
その口から紡がれる必死めいた言葉。
エイトの行動と制止によって急速に姿を縮めていくゼシカのメラゾーマ。
よし、もうすぐだ。
がんばってくれエイト!オレの為に!!
「ククールってゼシカのマヒャドとかメラゾーマとかライトニングデスとか受けても立ち上ってくるけど、
人間なんだよ!?どんなに生命力が●キブリ並だとか言われようが痛いんだよ!!?」
「ゴキ●リ並・・・・・って事は丸めた新聞紙とスリッパに弱いのかしら?」
「オレは今の二人のやりとりが痛いです。」
ていうかエイトさん、今のは天然だよね?
天然で素で毒を吐いちゃったんだよね?
オレの内部での葛藤をよそに、どうやらゼシカは今の説得(?)で怒りをおさめたらしい。
いつの間にかメラゾーマを消してにっこりとエイトの頭を撫でていた。
いいなぁその位置。
「んで、このおっさんスライムはどうするんでがすか?」
「「「あ。」」」
ヤンガスがスライムを片手に持って指さしながら言った。
忘れてた。
意図的にともいうが。
非常にどうでもいい感想だが、この二人が並ぶと相乗効果で視覚的に相当きついな・・・・。
「ねぇ、みんなこのスライムをモンスターチームに連れて行こうよ!」
(((なんってひねりのない展開なんだ・・・・・!!)))
全員の内心で総ツッコミ。
そんなオレ達をよそに朗らかに何の穢れもない天使の笑顔でさらっと爆弾発言をしてくれるエイト。
ああ、その爽やかな笑顔が今は逆に痛い・・・・!!
「「「だめ(だ・よ・でがす)」」」
「えぇ!?何で!!?」
「「「当たり前(だ・よ・でがす)」」」
「そ、そんな全員でハモらなくても・・・・。」
エイトたじろいだように後ずさりをする。
そんなエイトが愛しい。
っつーか今すぐにでも襲いたいが、その直後に襲い来るであろう紅蓮の炎を想像すると怖いのでやめておく。
「・・・・・行きましょうか、みんな。」
「そうでがすね。」
「お、地図を見てみるとここから南に進んだところに宿があるな。
今日はそこで休んでいかないか?」
「「さんせいー。」」
「え!?ちょっと待ってよみんな!!!」
何もなかったことにしようと踵を返したオレ達の背後からエイトの泣きそうな声がふりかかった。
その声に思わず振り返って抱きしめてやりたくなるものの、心を鬼にして堪える。
すまんエイト。
だがそのスライムの顔は生理的に受け付けないんだ・・・・!!
「・・・・ッ待って!!」
「うお!!?」
急に背後から誰かに抱きしめられる。
その誰かの正体がオレの予想通りだとしたら。
高鳴る心臓と吹き出そうな鼻血を堪えながら振り返ると、そこには涙目になってオレに抱きついているエイトだった。
・・・・・。
・・・・・・・・・。
ここから先の展開を十八禁にしてもいいですか?(やめてください。
「ククール・・・・お願いだから・・・・・ダメ、かな?」
「いや、全然オーケーじゃないか?むしろ連れていこ・・・へぶぅッ!!」
――――――めりィッ!!
次の瞬間ゼシカの無言のムーンサルト(見えなかったが多分そうだ)が背後からオレに命中。
地面との熱い抱擁をかましながら、さようならしそうになる意識と魂を必死につなぎとめる。
「あのね、エイト・・・・・」
「だめなのはわかってるけど・・・・でもさ、このスライムもしかしたら仲間はずれにされてたのかもしれないから。
他のスライムと違う異端な存在だからもしかしたら・・・・だから。
そんなの・・・・・かわいそうだから、寂しいから・・・・・・。」
「エイト・・・・・。」
エイトの真摯な訴えにオレ達は思わず押し黙ってしまう。
ノリで連れて行くつもりだったのなら無理矢理にでも諦めさせるのだが。
でも、そんな話を聞かされたら。
「仕方ないわね・・・・さっさとモリーさんのところに連れて行きましょうか。
それでいいわよね?ヤンガスもククールも。」
「まぁ、いいでがすよ。兄貴がそこまで言うんなら・・・・。」
「え!?本当に!!?」
ぱぁっと顔を輝かせながらゼシカを見上げているであろうエイト。
その表情を正面から見れないと思うと、地面に倒れこんでいる自分の身がやたら恨めしい。
「仕方ないじゃないそんな風に言われたら・・・・・ホラ、いつまで寝てるのよククール。」
「・・・・・・そうですね。」
もはや何も反論せずに、痛みの走る体を起こしてルーラの詠唱に入る。
この呪文はものすごい集中力を要するため、目を閉じて精神統一に入ろうとすると。
「ククール。」
「ん?」
「ありがとう!!」
「・・・・・・・・・・ッ!!」
にっこりと笑顔を向けたエイトのあまりの可愛さに思わずバンバンと叩く。
生きてて良かったと思いつつ、嬉し涙を流しながらエイトを抱きしめる。
「さっさとせんかぁバカリスマッ!!」
「ぐはぁッ!!」
「うわーーーーーーッ!!ククールーーーーーーーー!!?」
結局オレはゼシカのボディーブローで意識をあっさりと飛ばし、エイトがルーラを唱えて移動したらしい。
で、騒ぎの中心だったスライムはというと。
「・・・・・・ボーイ、なんだその生き物は。」
「え?スライムですけど?」
「・・・・・・そうだなボーイ。それは確かにスライムだが・・・・。」
「今日はこのヘギョ吉を預かってくれませんか?」
「ヘギョ吉というのは・・・・・」
「あ、このスライムの名前です。僕が付けてみました!」
「そ、そうかボーイ・・・・。」
さすがのあのおっさんも相当ひいていたらしいが、結局は受け入れてもらえたらしい。
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あとがき。
私はククールが大好きです。
あうー、お姉ちゃん遅くなってごめん!ていうか変なもんですみません・・・・!!!
ククールをヘタレに!あと背後からエイトがギュッとするっていうリクだったけど、
さすがになんかかわいそうな気がしてきた(笑
ちゃんと濃いギャグになってるかなー・・・・?
あとありがち過ぎてつまんない話になってすいません!!
遅れすぎちゃったけれど愛は込めてるから!
じゃあこれからもお互いにがんばろうね!!
では、いつもかまってやってくれてありがとうの意をこめて。
2005 10月29日執筆
(C)さば
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夢小説書きのさば妹にクク主を書いて頂きました〜(感涙
無理言ってクク主ギャグをお願いしたら何とまぁ素敵な小説が贈られてきたじゃないですか!///
天然さんなエイトが可愛くて可愛くて・・・毒吐いてる彼も大好きですよ(笑
ククールごっきー疑惑は妙に説得力が(えぇ!?
是非スリッパか丸めた新聞紙で叩いてみたいです。 はい。
エイトさんには甘いゼシカ姐が素敵です。
上目遣いのエイトさん・・・! 想像してみて悶えました。 可愛えぇ!!←やかましい
テストでお疲れなのに、素敵小説をどうも有り難う!!
またチャットなどで構ってやって下さいましvv