*前書き*

淡海様から頂きました、このSSは

・FF3とDQ8のコラボ
・カップリングはグズルーとクク主
・学園パラレル

と、なっております☆






































愛しき二人











「一緒にお昼行こう?」


声をかけられ、相手の顔を見ようとした瞬間。
目の前に迫っていたのは、赤い包みに包まれた弁当箱で。
赤色が眼前に迫り、ルーネスは思わず目を見開いた。


「な、・・・っぅえ?」
「ぅえ? じゃなくてさ。お昼、行こう?」


有無を言わさぬ口調なのは、クラスで仲の良い友人の一人で。
普段、家族の少年と同じくらい穏和な彼は、いつも穏やかな笑顔を
浮かべている"優しげな少年"なのだが・・・。
「・・・なあ・・・あの、さ」
「なぁに?」
―――にっこり。
笑顔に効果音が聞こえた・・・気がした。
相手は満面の笑みを浮かべているのだが、なんと言うか、凄く、怖い。
「い、行く! 行くってば!」
「うん、ありがとう、ルーネス」
一緒に昼食へ行くと言って、初めて相手の笑顔が優しいものになった。
・・・それでもまだ、どこか刺々しい雰囲気は残っているのだが。

ルーネスは机の横にかけてあった鞄から、弁当箱を取り出す。
同クラスの、同じ家に住む少年は、恐らく別クラスの少女の元へ
向かっているだろう。なら、誘わなくても問題はない。
こっそりとため息をつき、ルーネスは教室の出入り口に視線を向けていた
クラスメイト・・・エイトに「行こうぜ」と言った。















「今日も良い天気だね」
「あ、ああ―――そうだな」

何だろう。
会話はいたって普通なのに、何だか変に気まずいこの空気は。
つきたくなったため息を堪え、ルーネスは傍らを歩く少年に目を向けた。
自分と同い年の少年は、橙色のバンダナを揺らしながら、歩いている。
相変わらず微笑んだままの少年は、だが、ずっと前を向いて歩いていた。
普段からお喋りというわけではなく、どちらかと言えば聞き役の彼は、今日も
自らあまり話す事はなく、ただ、黙々と歩いている。
―――と、思われた。
今日は、何だか、違う。ルーネスはそう感じていた。

大体、何故自分は、エイトに昼食に誘われているのだろうか。
そこが疑問だった。エイトは普段、ある人物と一緒にお昼を過ごすはずだ。
それは"好きな人と一緒に過ごす時間"というもので。
ルーネスはそれを知っているから、エイトとは昼食をあまり取った事がなかった。

都合でも合わなくなったのだろうか?
そう思った瞬間、ルーネスは口を開き―――・・・。

「なあ、エイト。ククールは・・・」
「え? なに? なにか言った?」

遮るように言い返され、開いた口を閉ざした。
そのままスタスタと屋上へと歩いていくエイトを、慌ててルーネスは追いかける。
追いかけながら、再びため息をついた。相手の態度で分かってしまう。





―――こりゃ絶対、なんかあったな・・・。


























ルーネスは普段、屋上で昼食を過ごす。
エイトもそれを知っているから、今回の場所に屋上を選んでくれたのだろう。
「(・・・それか、アイツの顔を見たくもなかったか・・・だな)」
多分、エイトは今、会いたくない人がいる。それが誰だか、見当はある程度ついている。
フェンスにもたれかかりながら、ルーネスは弁当箱を広げた。
そこには二人分の弁当箱が入ってる。"今日は"これを、一人で片付けなければならない。
一緒に昼食を取る相手は、忙しくなったとかで、今日は食べられなくなってしまったから。
仕方ないと、思う。自分と違って、相手は既に大人なのだ。
こうして一緒に昼食を取れなかった事は、初めてじゃない。むしろ、何度もある。
そんな日は、誰か別の友人と一緒に、昼食を取る。弁当はおすそ分けだ。

「なーエイト。半分いらねぇ?」
「うん、頂くよ」

自身も弁当を広げながら、エイトは嬉しそうに頷く。
とりあえず、無駄にはならなくて良かったと、ルーネスは安心した。
今日も晴れている。そんな事をぼんやりと考えながら、弁当を広げていく。
そのまま"頂きます"と両手を合わせ、二人は食べ始めた。
最初に白い米粒を摘みながら、エイトがふと、口を開く。

「今日、イングズ先生は忙しかった・・・の?」
「あー・・・。夏合宿についての打ち合わせをするんだってさ」

だから無理なんだってよ、と、ルーネスは苦笑を浮かべた。
イングズは、ルーネスの担任教師だった。そして、とても大切な人。
科学教員の恋人は、バレー部の顧問でもある。夏休みの合宿が近いため、
今日は女子バレー部の顧問と打ち合わせをする事になったらしい。
「そっか・・・」と呟きながら、エイトはじっと弁当箱に目を注いでいた。
その様子を見て、ルーネスは肩を竦める。やはり、何かあったらしい。
だが、どう聞き出そうものか。あまり無理に聞き出すと、相手が嫌がる部分まで
穿り出してしまうかもしれない。それは、可哀相だ。
元々、ルーネスはそういった"巧みな交渉術"は得意な方ではなかった。
その分野は、家族である少年―――アルクゥやイングズに任せてある。
自分は割と、思った事をはっきりと述べてしまうタイプだったから。
別クラスの少女に言わせれば「単純なのよね」と言われてしまったのだけれど。
それでも、現状をなんとかしたいと思い、ルーネスは恐る恐る声をかける。
「エイト・・。なんか、あっただろ?」
それでも、バンダナを巻いた少年は黙ったままだった。
やはり言いたくないのかもしれない。そう思ったルーネスは、再び箸を
動かそうとした―――時。


「ククールが・・・さ」


エイトの口から出た名前に、ルーネスは目を見開いた。
「・・・また、女の子に優しくしてたから」
「あー・・・」
それしか言えなかった。なんとなく、予想はついていたから。
ククールとは、二人が通う高校の、生徒会副会長を務める男だった。
眉目秀麗、頭脳明晰、また運動神経も抜群だという、一見、非の打ちどころがない
男のようだが、その実、軟派な性格で、とても、フェミニスト。
つまり、女の子には優しい―――優しすぎるくらいだ。軽い、とも言う。
彼とエイトは、自分とイングズと同じような関係だとルーネスは知っているし、何より
ククール自身が"エイト命"と公言し、エイトに怒られるくらいだから、ククールは
相当エイトに入れ込んでいる。
いる、の、だが、それでも女子に優しく・・・という性格は直らないようだ。
実際、恋人が出来る前の彼はかなり女好きでもあったから。
どうやら、今回エイトの機嫌が悪いのも、それが原因のようだ。
以前も二人は、そんな感じの内容で喧嘩をしている(喧嘩と言っても、エイトが
一方的に怒っているだけなのだが―――)。
ルーネスの本音としては、「あの性格は死んでも直らい」なのだが、それは
フォローにはなっていないので、言わない方が良いだろう。

今回、ククールが声をかけていたのは、後輩の女子生徒のようだった。
一体何を話していたのかは分からない。ただ。
「やっぱり、そんな場面見ると、つらく、なる―――」
目を伏せたまま呟くエイトに、ルーネスは何も言えなかった。
恐らく、彼はククールと自分、両方に腹をたてているのだろう。相手に嫉妬しつつ、
だが、そんな感情を抱いてしまった自分にも嫌気が刺すといったところか。
自分はあまり、そんな事で喧嘩をした事がないので、よく分からなかったが。
だが。


「けど、アイツの事、嫌いになったんじゃねえんだろ?」
「え? そ、それは―――」
「それに、好きなんだったらさ、辛いってのも伝えた方がいいぜ?
怒るのも仕方ないだろうけどさ、もっと、本音は言った方がいいと思うんだ、俺」


そうでないと、伝わるものも、伝わらないから。
自分が本音を言えないから、伝わらない辛さを知っている。
会えなくて寂しい。その思いを、ルーネスは度々抱えている。
だが、本音を伝えてしまえば、それはイングズの足を引っ張ってしまう事になるだろう。
相手に負担はかけたくない。だからこそ、ルーネスは何があっても「大丈夫」の
三文字で済ませてしまう。尤も、相手にはバレているのかもしれないが。

ルーネスの言葉に、エイトが顔を上げたと同時に。
「エイト!!」
屋上の扉が、開かれる。ククールが飛び出して来た。普段整っている銀色の髪が
乱れている。相当必死に走ってきたようだ。心なしか、呼吸も荒い。
「く・・・ククール・・・」
エイトは驚いた表情をしていた。多分、自分も同じなんだろうとルーネスは思う。
そして、エイトの肩をポン、と、叩いた。

「行けよ」
「え―――・・・」
「行って、こいって。アイツ、多分必死になって探してたんだと思う」

分かるだろ?
そう言えば、エイトは小さく頷いた。
そして立ち上がると、ゆっくりとククールへと近寄る。


「・・・その・・・エイト・・・」
「ククール、僕・・・」


エイトが何かを言う前に、ククールが「・・・ごめん」と誤った。
だが、首を小さく横に振り、エイトは「ううん」と微笑む。
遠目から見ても分かる。どうやら、仲直りは出来たようだ。
「(・・・ま、喧嘩するほど仲が良いって言うしなあ)」
仲直り出来るに越した事はない。エイト自身、先刻まで怒りながらも
落ち込んでいたのだから。
問題は解決したのは何よりだった―――見せ付けられた気もするが・・・。

「・・・もしかして、俺、お邪魔?」

ふと気付いて呟いた言葉は、二人にも聞こえていたようだった。
抱擁も何もしてはいなかったものの、二人はルーネスの存在を思い出したらしい。
ほんのり頬が赤く染まっている気がする。

「あー・・・その、悪ぃな、ルーネス」
「気にすんなってー。しっかし、百戦錬磨のククール様も、本命には初々しいんだな」
「う、るせぇ!」

照れたように慌てて否定するククールに、ルーネスもエイトも声を上げて笑う。
そしてルーネスは立ち上がろうとするが、エイトはそれを慌てて止めた。
「あ、いいって、ルーネス。僕達が行くから。でも、ごめんね?」
申し訳無さそうな表情を浮かべるエイトに、ルーネスは小首を傾げた。
お昼・・・と言われて理解する。


「気にすんなって。ほら、二人で仲直りに昼飯食ってこいよ」


にっと笑うと、エイトは「ありがとう」と微笑み、弁当を片付け始めた。
先刻とは打って変わって明るい表情を浮かべている。
その気持ちは、なんとなく分かる気がした。
だから、見送る。ククールにしっかりと「もう悲しませんなよー」と喝を入れるのも忘れずに。

屋上の扉が、静かに閉められた。
一人になったルーネスは、弁当箱をせっせと片付け始める。
片付けながら、思った。二人分も食べられるだろうか?
育ち盛りだから入らないわけではないが、しかし"良く食べる"自分と、もう一人の
二人分なのだ。正直、食べきる自信はなかった。

「食いモン粗末にすんなよなー・・・っと・・・」

苦笑を浮かべながら、ルーネスは自分の弁当箱に手を伸ばすと、再び
箸を動かし始めた。せめて、自分の分だけでも食べようと思って。
昼休みは貴重な休憩時間なのだ。この後は午後の授業を受けて(とは言え、恐らく
自分は寝ているかもしれないが)、ルーネスは部活に行く。
運動部の練習は厳しい。だから、今のうちに身体を休めておかねば、明日に響く。
―――と、その時、屋上のドアノブが、音を立てた。
ルーネスは顔を上げる。視界に、揺れる金色の髪が入った。
白衣を羽織っているのは、次の授業のため・・・だろう。


「ルーネス・・・」


一際大きな息をつくと、相手は扉を閉め、ゆっくりと歩み寄ってきた。
反応は出来なかった。なんと言うか・・・驚きすぎて。
「お・・・あ、れ? お前、何で―――」
「多分、ここにいると思っていた・・・」
呼吸を整えながら、イングズはルーネスの隣に腰掛けた。
そして前髪をくしゃりとかき上げ、苦笑を浮かべる。
「お前に会いたい一心で、打ち合わせを早々に終わらせたんだ。
デッシュには散々からかわれてしまったがな―――」
すまなかったと、イングズはルーネスの髪に指を絡めた。
「・・・いいよ。会いに来てくれただけでも、嬉しいからさ」
小さく微笑みながら、ルーネスは片付けたもう一つの弁当箱を広げる。
自分も、一緒にいられる時間を大切にしたかった。
多分、少し前までここにいた"二人"に中てられたのかもしれない。
けれど、今、一緒にいられるこの時間を大切にしたかったのだ。

「・・・寂しかったよ」
「ルーネス・・・?」
「お前がいない時間、凄ぇ寂しいんだ。
でも―――寂しいって思った時ほど、イングズはすぐに来てくれる。
だから・・・、俺、嬉しいんだ」
「ルーネス・・・」

そっと手を伸ばし、イングズはルーネスを抱き寄せた。
誰もいないとはいえ、屋上だ。誰が来るか分からない。
だが、ルーネスはされるがままだった。何も言わない。
もっと、温もりを、感じたかった。

「お前がいつも我慢しているから・・・申し訳ないと思っていた」
「・・・うん」
「今日・・・そう言ってもらえて、少しだけ・・・安心したんだ」

本音を言ってもらえるというのは、それだけ信頼されているという事だからな。
囁くように、イングズは言葉を紡いでいく。
どうやら、知らず知らずの内に、相手を不安にさせていたらしい。
ククールの事、茶化せる立場じゃねえよな。ルーネスは微かにため息をつく。


「・・・さて、と。飯、食おうぜ? 昼休みもあとちょっとしかねえし」
「そうだな。お前を授業に遅刻させるわけにもいかない」
「真面目ー。なんだよ。俺が授業さぼってでも一緒にいたいつったら
イングズせんせーはどうしてくれるわけ?」

そっぽを向きながら、ルーネスは拗ねるような口調で言った。
相手の顔は見ない。自分の顔が熱いから。きっと、赤くなっているから。
多分、こんな子供っぽい切り替えし、相手は呆れるに決まっている。

だが。

「・・・ルーネス」

相手が苦笑する気配が伝わってきた。
ルーネスが振り返ると同時に、相手が頬に手を添えてきた。
白い(らしい、相手曰く)自分の頬に唇を寄せ、"生真面目"な男は、
反則とも思えるほどの微笑みを浮かべ、言った。




「お前と一緒にいられるなら、サボるのも悪くないかもしれないな」







普段は"超"が付くほど真面目なくせに。
こんな時だけ、本気か冗談か分からない事を言うものだから。



ルーネスは、声を上げて笑った。
きっと、幸せすぎて―――。



















Fin


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淡海様から相互記念を頂けるとのことで、図々しくも「グズルーで! 出来ればクク主も・・・」と
お願い致しましたら、何とも素敵な学園パラレルが送られてきたではありませんか!!!(大 絶 叫
物凄く我が侭なリクエストだったにも関わらず快く承諾して頂いて、淡海様には頭が下がりっぱなしです(ぺこぺこ
右側同士が本当に仲良しで、それだけでもお腹一杯になりそうなのに、ククールとイングズが出てきた途端、何とも甘い雰囲気に!
これだけで御飯何杯食べられるだろう(真面目
相思相愛なグズルーとクク主に頬が緩んで仕方ありません(怪しいから!
詳しい設定もあるようです。 連載して下さらないかなぁなんてコッソリ思ってる・・・げふ!
美術部のエイトさん・・・! いいかも!!(キュン!
吹奏楽部と掛け持ちしてくれてたら萌え死にます。 吹奏楽の担当はフルートとか!(マテ

淡海様、萌え小説有り難う御座いました!!

2007/06/29