近づいてきた。
何をされているのか、認識するのに時間はかかってしまい―――



「・・・・ふ、つうに食え、普通に!!」


口元を抑え、ルーネスは頬を赤らめながら目の前の男を睨みつける。
だが、そんな彼の様子に、男は首を微かに傾けた。その動作に合わせて
明るい金の髪が揺れる。普段なら綺麗だと思うところだが今はそれどころではない。

「・・・普通じゃないか?」
「口移しがか!? チョコを口移しで食べる事の何処が普通だ!?」

ルーネスは未だにイングズの挙動になれない事がある。
普段はクールで澄ましてお兄さんぶっている彼。実年齢はもちろんの事、
精神面もイングズの方が大人であるにも関わらず、彼は時折、突拍子もない
行動を取ってくる事がある。

今回が、そうだった。恋人同士のイベントという事で、ルーネスは昨年と
同じようにチョコレートを作ったのだ。
だが、イングズはあまり食べていなかったようで、隣でチョコを頬張っていた
ルーネスが「食べないのか?」と聞いたところ、「では・・・」とイングズは顔を近づけてきた。

おや? と思う間も無く、唇を重ねられて。
気付いたら、口の中にチョコレートは無かった、と。

ほんの、数分前の出来事の話。




ルーネスは口元を抑えながら、真っ赤な顔でぶつぶつと文句を呟く。
チョコの味が分からなくなってしまった。どうも混乱気味らしい。
突然キスをされたのだから、当然といえば当然だよな、と、ルーネスは
思いながら、イングズの顔に視線を向けた。

「ルーネス」

同時に、名前を呼ばれる。
ゆっくりと手を伸ばしてきた。剣を握っている指が、頬を撫でる。

「・・・嫌だったか?」

真剣な表情でそう言われてしまい、ルーネスは顔を反らした。
その言い方は、ずるいと思う。理由は分からないが、とにかくずるいと思うのだ。
本音は"嫌じゃない"から。だから、次が来てもきっと拒めない。
「ずるいよ、お前・・・」
溜息をつき、ルーネスはイングズの胸元に顔を押し付けた。
これ以上、見つめられるのは恥ずかしいからだ。イングズの腕が背中に回る。

「嫌じゃねえけどさ・・・なんか、俺だけ恥ずかしがっているみたいじゃんか」
「・・・これから、もっと慣れればいいだろう?」
「お前なー・・・!」




何て言い分だろう。
そう思いながらも、ルーネスは笑みが零れるのを感じた。
恥ずかしいし、彼の一挙一動を、未だに意識してしまう自分がいるけれど。

それでも、それ以上に、イングズが自分に向けてくれている言葉や行動の
一つ一つが、ルーネスにとっては、嬉しいから。












Fin








□あとがき□

あ・・・いかわらずオチて無い気が(滝汗)。
FF3ではお久しぶりです、淡海です!

今回、FF3はバレンタインという事で、こちらはグズルーバージョンと
なりますが、相も変わらず仲が良いというか、目のやり場に困ると
言うか(何で)、ご、ご馳走様でした(えー!?)。
グズルーの場合は、昨年もバレンタインでは執筆したのですが
ほのぼのというか、甘いのは相変わらずのようです、あう。
とりあえずグズ兄は素敵にタラシ(こら)だと良いよ! というか
この人は平気な顔で素敵な事をして「ん? 何かいけなかったか?」と
いけしゃあしゃあと言っちゃう人だと良いなあ、という・・・誰の影響だろう(汗)。
素敵な内容は各自皆様でお任せします(何てこと)。












08/02/14   淡海知博







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素敵グズルーSSを強奪・・・もとい、頂いて参りました!!
口移しですよ! 口移し!!!!(二回言った
兄はホントに素でこういう事やってると良いと思います。
そしてルーを翻弄するんですよ! 照れ屋なルーネスも可愛いっ(キュン!
こんなグズルーが理想ですv チョコのように甘いのに、晴れ渡る空のように爽やか(どんな例えだ;
美味しいグズルーを有り難う御座いました! 御馳走様ですv

素敵なSSを書かれた淡海様のサイトは↓のサイト名からドウゾ☆ 必見ですよ〜!
□ TIME CHILDREN □